カウンセリングのすすめ

心理カウンセラー小林宏の散文

アイデンティティクライシス

「自分には自分らしいものが全くないと思います。私は例えば友達に"あなた何色が好き?"といわれると、自分では何色が好きなんだろう?って思わないんです。この人は何色が好きなんだろう?この人は何色が好きだって言ってほしいんだろう?ってすぐ思ってしまうんです。そしてこの人は赤が好きなんだ、赤が好きだって言って欲しいんだって思うと、私は赤が好きだって答えていたんですよ。それはどんな事でも同じで、自分がどうかではなくて、相手の人がどう思ってもらいたがっているか、どうしてもらいたいと思っているだろうかを基準にして動いていたんですよ」

これは大学生の女子の発言である。まさにアイデンティティクライシスである。

これは「相手を喜ばせることが自分の喜びである」というのとは違う。彼女には自分の喜びという実感がないのだ。

自分の考えや感じに頼るのではなく、相手の意志に沿って相手に合わせることばかりやっていたり、受験、受験とそればかりで自分の精神的内面と付き合わなかったり、友人関係を避けてきたりすると"自分がない"状態で大人になってしまうことがある。

彼女は高校を卒業して大学生になり親と離れて一人暮らしをするようになって初めてこのままではやっていけないと気付いた。

今まで親に決めてもらってきたので、「自分で実感することがわからない」のだという。

自分で自分の実態に気付いたのだから、これからは意識をして自覚的に自分の内面をよく見つめ、自分の中でどんなものが動くのか、それを意識化する練習をしていく必要がある。
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